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【イベントリポート】

概要

名称:『母千里』
日付:2010年11月14日(日)
時間:昼の部 12:00〜、夜の部 18:00〜
場所:清水劇場(広島県広島市南区)


「ハルヒな一日、我が家から遠く離れて。」

2010/11/19
by K'z (N)

え〜、月日の経つのは早いもので、さやかちゃんを追っかけて5年半が過ぎました。 その間に、公営競技場や健康ランド、ライブハウスなどなど…。 それまでの生活では無縁だった数多くの経験をしましたね。 そして今回、またまた新たな経験をすることになったのでした。 それは、「大衆演劇の観劇」です。 これまでにさやかちゃんの歌謡ショーを目当てに訪れた健康ランドでも、日によっては大衆演劇を催すところもあり、 その存在自体は知っていました。 ただし、時代劇や股旅ものといった演目が主流であるために、どうしても年配者の娯楽というイメージが拭いきれなかったのです。

ところが、まだ残暑も厳しい頃。 なんと、「さやかちゃんが大衆演劇に出演する。」との告知がされたのでした。 タイトルは『母千里』、海の向こうに強制的に連れ去られた横田めぐみさんの拉致事件を題材にしたお芝居だそうです。 さやかちゃんの役柄は横田めぐみさんだとか。 正直なところ、観劇すべきか否か、おおいに悩みました。 もちろん、上演地である広島への遠征費用捻出も要因のひとつですが、 それ以上に「横田さん一家の血の滲むような苦悩を、営利の源にしてよいのか?」との思いがあったからです。 まあ、結局は「さやかちゃんが横田めぐみさんをどう演じるのか?」を見たくなり、年次有給休暇をとっての遠征が決定しました。 映画などと異なり「次回見れば、イイや…。」が通用しないですし、仮に再上演されても彼女がまた出演する保証はありませんから…。

当日は午前3時に仕事を終えて、始発電車で地元を出発です。 「昼の部」と「夜の部」の両方が見られる代わりに、遅延や運転見合わせなどが許されない綱渡り状態の段取りになりました。 6:30発の新幹線で東京を発てば、11:00前には広島に到着。 東京駅で朝食と発泡酒を買い込んで、車内で爆睡決定。 記憶の中での停車駅は品川〜新横浜〜福山と、文字どおりの「超特急」でした。

現場に着くと、すでにたくさんのお客さんで賑わっています。 上演する清水劇場さんの常連客と、演じる春陽座(はるひざ)一座のファンと思しきひとたち。 残念ながら、さやかファンは少なかったかな…。

まずは、入場受付へ向かいましょう。 事前に予約しておいたチケットとともに、ファンクラブ枠での予約者に振る舞われたのはプリン。 実はこのプリン、広島市内にある「Gilmour Tambourin(ギルモアタンバリン)」さんという、 『道-ふるさとから遠く離れて-』のPVにも登場したお店のものなのです。 しかも、まだ一般には販売されていないきなこ味。 開演までのわずかな時間、舌鼓を打ちまくることにします。

さて、カンジンな舞台のネタについてです。 『母千里』は、大阪の劇団・春陽座の初代座長である澤村新吾さんが演じるひとり芝居。 ひとり芝居の中で、さやかちゃんがどうカラむのか、大衆演劇初体験のワタシには想像がつきません。 1回の公演は3部構成になっていて、第1部はさやかちゃんの「歌謡ショー」、第2部が本題の澤村さんのひとり芝居『母千里』、 第3部は春陽座のみなさんの「舞踏ショー」という、盛り沢山かつ濃密な内容です。

まずは、第1部の「歌謡ショー」。 さやかちゃんがドレッシーな装いで登場します。 今日のラインナップは、彼女が幼い頃に初めて歌ったという『一円玉の旅がらす』以外、すべて「母」を連想させるものでした。 早くも、『母千里』への序章になっているかのようです。

少々の休憩を挟んで、いよいよ第2部『母千里』が始まります。 ナレーションとともに緞帳が上がると、舞台上は海岸沿いの「錦公園」です。 さやかちゃん扮する横山はるかは、お母さんとふたりでお弁当を持って公園に遊びに来ています。 「来週は(弟の)ユウヤたちを連れて、また来ましょうね。」と話すお母さんに、 「その時は、ケン太も!」と飼い犬にも愛情を注ぐはるかに、つい(苦笑。 ここで笑えるのは、さやかファンならではのお楽しみです。

そして、忌まわしき「その時」が…。 音もなく近寄る3つの影。 逃げまどい必死に抵抗するはるかの姿は、お芝居であることを忘れさせるほど痛烈でしたよ。 このあとは、母を演じる澤村新吾さんのひとり芝居となります。 ストーリーも台詞も、実際に拉致された横田めぐみさんの母・早紀江さんがあらゆるメディアに公表したそのままで、 まったく脚色されていません。 そのためか、ワタシにも聞き覚えのある文言だったりするのですが、ナマの役者さんが発する言葉の迫力に、 横田早紀江さんが話しているような錯覚さえ覚えました。

「ムリヤリ閉じ込められた船内で、ずっと母に助けを求めていた娘の叫び」 「何十年も迷走を続けながら歳老いて行く母の苦悩」が否応なく客席にぶつかってくると、目も耳も塞ぎたくなってしまいましたね。 ひとり芝居といいながら、連れ去られるはるかが実像として舞台に存在したことも手伝ったのかも知れません。 それに、『母千里』はハッピーエンドで終わりません。 娯楽として見れば、やり切れない気持ちのまま劇場を後にするのは不本意ですが、事実を湾曲させてまでフィクション化するより よっぽど好感が持てるものです。

1時間近くの『母千里』のあとは第3部。 春陽座のみなさんによる「舞踏ショー」に移ります。 座長さんの「休憩時間の間に、おしっこ行ってきんさい♪」に広島を感じさせます。 そして、楽曲に合わせて繰り広げられる「舞踏ショー」には目を見はるものがありました。 しかし、もう終演したというのに、まだ、横山はるかの「お母さん、助けて。こわいよ、お母さん…。」の台詞が耳から離れないんですよ。 「舞踏ショー」で使われる『矢切の渡し』をさやかちゃんがナマで歌うらしいので、早くキモチを切り替えなければいけないのですが…。 そういえば、昨年の「演歌ライブ」で歌った『矢切の渡し』が、ここで陽の目をみるとは意外でした。

合計3時間半にわたる長丁場でしたが、昼夜ともに多くのお客さんが来場して「大入」だったそうです。 大衆演劇では、大入だった舞台の終演時にお客さんを含めた全員で三本締めをやるのが「お約束」。 ワタシも参加させていただきました。 さやかちゃんも、舞台上にお出ましです。

今回の観劇、いろいろ考えさせられました。 題材が重すぎて大衆演劇の醍醐味を吸収しきれなかったワタシでしたが、一日も早くハッピーエンドで締めくくる『続・母千里』が 見たいと思います…。

なんだか、今回はほとんどイベントリポートになっていないですね。 最後に、ふたつほど重箱の隅を突っついてみましょうか。

ひとつめ。さやかちゃんが劇中でまとっていた衣装。 な、なんと冬服セーラー。 しかも、幻の白スカーフですよ。 店頭キャンペーン時に、1回しか見られなかった姿です! ワタシもお初でした。 うん、完璧な中学生だ…。 あえて言うと、横田めぐみさんが失踪した1977年当時って、紺のハイソックスではなくて白いソックスを三つ折りにするのが スタンダードだったんじゃないかな? まあ、当時の再現ではなく「事実をもとにしたフィクション」ですから、オッケーですな。

ふたつめ。 夜の部の「歌謡ショー」にて。 さやかちゃんの右足に、アザらしきものが目に留まりました。 また、自宅で振り付けの練習でもしたのですかね。 それとも、よっぽど熱を入れて先程の舞台を演じてたんでしょうか。 後日、彼女のブログによると、両足の大きなアザは熱演の「勲章」だとか。 あらら、夜の部でアザを増やしちゃったんだ…。 「勲章」、確かにその通りでございます。

翌15日は、横田めぐみさんが拉致されたと言われている日です。 非常に月並みではありますが、早くコトが解決するように切望します…。 と思っていたら、ワタシたちが『母千里』を観劇していたその日の広島で、拉致問題担当のおエライさんが、 「予め用意した2つの言葉で法務大臣は務まる。」などとのたまったとか。 イイのか?それで…。 変に敏感に反応してしまったワタシでした。


曲目

  1. 初めてのひと
  2. 一円玉の旅がらす
  3. おかあさん
  4. 瀬戸の花嫁
  5. 秋桜
  6. 道 -ふるさとから遠く離れて-

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